上 部分模写 小磯良平『T嬢の像』
目次
途中段階~完成まで
↓ 前回までの制作。全体的に絵具が置かれていて明暗も合ったので、ここから着物や背景も描いていき、顔の造形を微調整していきます。目鼻立ちの大まかな位置は合っていてもほんの少しの形の違いで、表情や顔立ちは変化します。裏を返すと、その人の顔の個性はごく細部にあるとも言えます。
↓ よく見ると、鼻の造形はもっとこうだ、とか目の形はもっとこう、というように丹念に見ていくことで、よりその人の顔というものに近づいていきます。着物は薄く溶いた青(青と茶色)で描いていきました。着物の柄を描くと、より実体感が増し絵の中におさまるような感覚があります。
↓ こうして、『T嬢の像』部分模写が出来ました。模写によって女性の表情や顔の個性をとらえることで、より細部の重要性を感じ、関心も増しました。学べた点としては、肌の描き方。様々な色を使っているわけではありませんが、繊細な明度のコントロールによって豊かで生き生きとした肌を描いたのが分かります。
少し至らなかったのは、やはり顔部分で、小磯良平氏の実作は、濃い絵具で的確に描かれており、迷いのない熟練が見て取れました。筆のタッチの差異は、キャンバス地など細かな支持体の特性によるものかもしれません。また、若干上方からの構図の顔の立体感がもう少し鮮明に捉えられるとよかったです。しかしながら、柔らかい軟毛筆によるグラデーションや、使っている絵具のバリエーションは、氏の技法にかなり近いものだったと思います。
使用した支持体
F4号シナベニアパネルに板絵布、アブソルバン
使用した油絵具
- シルバーホワイト
- バーミリオン
- イエローオーカー
- ネイプルスイエロー
- ピーチブラック
- バーントアンバー
- バーントシェンナ
- ローアンバー
- ピサネルロブルー(ウルトラマリンブルー)
- アリザリンクリムゾン
- オリーブグリーン
使用した画用液
- ターペンタイン
- スタンドリンシード
- ヴェネチアテレピン
- ダンマルバニス
- マスチックバニス
使用した筆
- ホルベイン 油彩筆 SF(馬毛)
- 名村 OXA(牛耳毛) 等
画家紹介
小磯 良平(こいそ りょうへい)1903-1988
1922年東京美術学校入学。1926年『T嬢の像』で帝展特選を受賞。
ヨーロッパ遊学のち帰国後、古典技法を日本洋画に根付かせる表現に尽力した。
1983年、文化勲章受章。1992年に出身の神戸市と読売新聞社が創設した
全国公募展『小磯良平大賞展』がある。
今回は以上です。また、次の記事で。
前段階の制作日記はこちら
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